Le Petit Prince★星の王子さま『大切なものは目に見えない』




童話というよりは寓話(ぐうわ)的、子供向けというよりは大人向けの本として有名な『星の王子さま』です。読んだことがないという方は、ぜひ一読してみてください。大人になって見えなくなってしまった、あなたにとって本当に大切なものをきっと思い出させてくれます。

寓話とは、比喩によって教訓的な内容を、人間の生活に馴染み深いできごとを見せ、それによって諭すことを意図した物語やたとえ話。簡単にいうとメッセージが込められている話のこと。

『星の王子さま』は、フランス人作家サンテグジュペリが1946年に出版した「Le Petit Prince」を日本語訳し、1953年に出版されたものです。「Le Petit Prince」は80ヶ国以上の国で翻訳され、現在まで6千万部以上販売されている、「聖書」に次ぐベストセラーとなっています。

作者のサンテグジュペリが『星の王子さま』を執筆したのは、第二次世界大戦の最中、亡命先のアメリカで、普段から不思議な少年の絵を紙きれなどに書いていたのを見ていた出版社のオーナーから、その少年を主人公にした童話を書くように促されたのがきっかけでした。

『星の王子さま』の主人公「ぼく」の職業はパイロットですが、作者であるサンテグジュペリも1926年からパイロットとして活躍します。しかしサンテグジュペリは1944年に地中海上空で行方不明となってしまい、54年後の1998年になってようやく地中海マルセイユ沖のリュウ島近くの海域で、彼の遺品が発見されました。

『星の王子さま』のもう一人の主人公「王子さま」はわがままで、純粋な子供のような性格をしているのですが、サンテグジュペリ本人もまたわがままで、欲しいものは必ず手に入れたがる子供のような性格であり、「王子さま」に自分自身が投影されているのかもしれません。

つまり『星の王子さま』はサンテグジュペリの自伝的要素が多く詰め込まれた小説であると言うことができます。

ぼくがパイロットになったわけ

6歳の時に読んだ本に、ウワバミが1匹のけものが丸呑みし、半年間かけて、こなれる(消化される)という内容がかかれていて、ジャングルのなかではどんなことがおこるのだろうといろいろと考え、ぼくの人生初の第一号の絵を色えんぴつでかきあげました。そのこわい絵がこの絵です。

おとなの人たちに見せ、「これ、こわいくない?」ときくと、

『ぼうしの絵がどうしてこわいものか』といいました。

ぼくがかいたのはぼうしではなく、ゾウをこなしているウワバミの絵でした。こんどはわかってくれるだろうとおもって、ウワバミのなかみをかいてみました。それがこれです。

おとなの人たちにみせると、絵なんかはやめにして、地理と歴史と算数と文法に精をだしなさい。といいました。このことをきっかけに絵かきになることをあきらめ、飛行機の操縦をおぼえました。

それからのぼくは、どうやらものわかりがよさそうな人に出くわすと、第一号の絵をみせ、ほんとうにものがわかる人かどうか知りたくなりましたが、わかる人はひとりもいませんでした。ぼくはその人がわかりそうなことに話をかえ、政治やゴルフや、ネクタイの話をすると【ものわかりのよい人間だ】とおとなの人たちはたいそう満足するのでした。

ぼくと王子さまの出会い

6年前にサハラ砂漠で飛行機がパンクするまで、親身になって話せるあいてはひとりも見つからず、ひとりきりでした。ぼくはおよそ人が住んでいるところから千マイルもはなれた砂漠のまん中で、持っているのは1週間分もつかもたないかの水のみ、ひとりぼっちで生きるか死ぬかの問題に直面していました。

ね・・・ヒツジの絵をかいて!

ぼくはびっくりぎょうてんして、とびあがりました。するとそこには道にまよっているようすもないく、つかれきっているようすもないく、おなかがへっていたり、のどがカラカラのようすでもない、およそ人が住んでいるところから千マイルはなれたところで、とほうにくれているようには見えないぼっちゃんがたっていました。

「あんた、そこで、なにしているの?」というと、

ね・・・ヒツジの絵をかいて・・・・・

ぼくはヒツジの絵なんかかいたことがないので、ためしに第一号の絵をかいてみました。すると

ちがう、ちがう!ウワバミにのまれているゾウなんかいやだよ。ヒツジの絵をかいて

・・・。

ぼくはヒツジの絵をなんどもかきましたが、病気で死にそうだったり、ツノが生えていたり、ヨボヨボだったりでうまくいかず、大ざっぱな箱の絵をかき、その中にヒツジがいるとせつめいしました。すると、

うん、こんなのが、ほしかったんだよ。このヒツジ、たくさん草たべる?

ぼくと王子さまの出会いでした。

じゃあ、きみも、天からやってきたんだね!

王子さまがいったいどこからきたのか、わかるまでにだいぶ時間がかかりました。王子さまはぼくにいろんなことをきくのですが、ぼくのきくこととなると、いっこうにきいているようすがありません。王子さまがいったことからすこしづつことがほぐれて、やっといろんなことがわかってきました。

じゃあ、きみも、天からやってきたんだね!どの星からきたの?

おそろしいバオバブの話

王子さまの星はとても小さくてヒツジをはなして飼っていてもすぐに見つかられる大きさのようです。

ヒツジが小さい木をたべるって、ほんとだね?

『うん、ほんとだ』とこたえるとたいそうよろこんでいました。小さな王子さまの星はバオバブの木を早く追いはらわないと根だやしにするわけにはいかなくなって、星の上いちめんにはびこり、その根が星を突き通し、星が破裂してしまいます。そうならないために、ヒツジを飼えば、バオバブの木をたべてくれると期待しているのです。

涙の国って、ほんとにふしぎなところですね。

王子さまはヒツジが小さな木をたべてくれるとよろこんでいましたが、花をたべてしまわないかと心配していました。その中でもトゲのある花をたべるとしたらトゲはなんのためにあるのかを気にしていましたが、ぼくはパンクがなおりそうもなく、飲み水も底をついていて、いらいらしていたので、でたらめに答えました。

王子さまは顔をあかくしていいました。

だれかが、なん百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花がすきだったら、その人は、そのたくさんの星をながめるだけでしあわせになれるんだ。そして、【ぼくのすきな花が、どこかにある】と思っているんだ。それで、ヒツジが花をたべるのは、その人の星という星が、とつぜん消えてなくなるようなものなんだけど、それをきみはたいしたことじゃないっていうんだ

そして、わっと泣きだしてしましました。

ぼくはのどがかわいても、死ぬ思いをしても、そんなことはどうでもよいことでした。ぼくはなんとかして王子さまをなぐさめたかったけれど、なんといっていいのかわかりませんでした。ものをいうにも、へたくそで、うまくいえませんでした。どうしたら王子さまの気もちになれるのか、どこで王子さまの気もちといっしょになれるのか、それもわかりませんでした・・・

運命の出会い

王子さまの星には場所をふさぎもしないし、だれもじゃまもしない、たいへんすっきりした花が、いくつも咲いていました。それはどこからか飛んできた種が、芽をふいた花でした。そこらの芽とは似ても似つかない芽なので、しじゅう、つきっきりで見まもっていました。ある日の朝、ちょうどお日さまがのぼるころ、なにひとつ手おちなくけしょうをこらした花は、とうとう顔を見せました。

きれいだなぁ!

その花は、王子さまがホロリとするほど美しい、トゲのある花でした。

「いま、朝のお食事の時刻ですわね。あたくしにも、なにか、いただかせてくださいませんの・・・・・・」

王子さまは汲みたての水がはいったジョウロをとりにいって、花に朝の食事をさせてやりました。花は咲いたと思うとすぐ、自分の美しさをはなにかけて、王子さまを苦しめはじめました。王子さまはほんきで花を愛していましたが、いろいろなしうちをされて、花の心をうたがうようになりました。

ぼくは、あの時、なんにもわからなかったんだよ。あの花のいうことなんか、とりあげずにすることで品定めしなければ、いけなかったんだ。ぼくはあの花のおかげでいいにおいにつつまれていた。明るい光の中にいた。だから、ぼくはどんなことになっても、花から逃げたりしてはいけなかったんだ。ずるそうなふるまいはしているけど、根は、やさしいんだということをくみとらなければいけなかったんだ。花のすることといったらほんとにとんちんかんなんだから。だけど、ぼくはあんまり小さかったから、あの花を愛するってことが、わからなかったんだ

渡り鳥たちが、ほかの星に移り住むのを見た王子さまは、いいおりだと思って、ふるさとの星をはなれることにしました。出発の日の朝、王子さまはじぶんの星をきちんと整理しました。王子さまは火山が爆発しないようにすすはらいをし、このごろに生えたバオバブの芽もぬきとりました。そして別れのしるしに、花に水をかけて、覆いガラスをかけてやろうとしていると、王子さまはいまにも涙がこぼれそうになりました。

さよなら・・・

花はなにもいいません。

さよなら・・・

花はせきをしました。でも、かぜをひいているからではありません。「あたくし、ばかでした」花はやっと、王子さまにいいました。「ごめんなさい。おしあわせでね・・・」王子さまは花がどうしてちっともとがめるようなことをいわないのか、わかりませんでした。

あたくし、あなたがすきなんです。あなたがそれをちっとも知らなかったのは、あたくしがわるかったんです。でも、そんなこと、どうでもいいことですわ。もうよそへいくことをおきめになったんだから、いっておしまい、さっさと!

花がそういったのは、泣いている顔を王子さまにみせたくなかったからでした。それほど、弱みをみせるのがきらいな花でした。

王子さまのたび

王子さまは星巡りのたびをはじめ、地球にくるまえに6個の星をたびしました。それぞれの星には①~⑥に書いた人物が一人だけいました。

  1. 王さま    【権力】
  2. うぬぼれ男 【人気】
  3. のんだくれ 【快楽】
  4. 実業家   【財産】
  5. 点燈夫   【労働】
  6. 地理学者  【研究】

それぞれの星で出会った人たちは人間が人生において溺れてしまいがちなこと、時間を多く費やしてしまいがちなことが象徴されています。【】の中はその抽象的な表現です。

7ばんめの星『地球』

地理学者におしえてもらった7ばんめの星は、そうやたらにある星とはちがう『地球』という星です。そこには、111人の王さま、7000人の地理学者と、90万人の実業家と750万人ののんだくれと、3億1100万人のうぬぼれがすんでいます。

さて王子さまは地球に足をふみいれると、月の色をした環が、砂の中に動いていました。

こんばんは・・・

王子さまはきいろいヘビにあいました。きいろいヘビはここが地球で、アフリカで、砂漠であることを教えてくれました。王子さまは空を見あげながらいいました。

星が光っているのは、みんながいつか、じぶんの星に帰っていけるためなのかなぁ。ぼくの星をごらん。ちょうど、真上に光っているよ・・・。だけど、なんて遠いんだろう!

「あんたみたいに弱い人が、こんな、岩でカチカチの地球にやってくるなんて、かわいそうだな。もしあんたが、いつか、あんたの星が、なつかしくてたまらなくなって帰りたくなったら、おれが、あんたをなんとか助けてやるよ。それから・・・」

砂原と、岩と雪をふみわけて、長いこと歩いていますとやっと一本の道をみつけその道の先に、バラの咲きそろっている庭を見つけました。王子さまはバラの花をながめました。花がみな、遠くに残してきた花に似ているのです。

王子さまはたいへんさびしい気もちになりました。遠くに残してきた花は、じぶんのような花は、世界のどこにもない、といったものでした。それだのに、どうでしょう。たった一つの庭にそっくりそのままの花が5千ほどもあるのです。王子さまは草の上につっぷして泣きました。

こんにちは・・・

そこへキツネがあらわれていいました。

もう一度、バラを見にいってごらんよ。あんたの花が、世界にひとつしかないことがわかるんだから。それから、あんたがおれにさよならをいいに、もう一度、ここにもどってきたら、おれはおみやげに、ひとつ、秘密をおくりものをするよ。

王子さまは、もう一度バラの花を見にいきました。そしてそれが他の人から見たら、ただのおんなじ花だけど、あの花はちがう、あの花は、ぼくが水をあげた、覆いガラスをかけてあげた、ついたてで風があたらないようにしてあげた、毛虫をたいじしてあげた花で、不平もきいてやったし、じまん話もきいてやったし、だまっていたら時には、きき耳を立ててやった花で、「ぼくの花なんだと気がつきました。キツネは、共にすごした時間や、ついやした時間がそれを『大切』にするということを教えてくれました。

おれの目から見ると、あんたはまだ、ほかの十万もの男の子とべつに変わりない男の子なのさ。だからおれは、あんたがいなくたっていいんだ。あんたもやっぱり、おれがいなくなったっていいんだ。あんたの目から見ると、おれは十万ものキツネとおんなじなんだ。だけど、あんたがおれと仲よくなったら、おれたちは、もう、おたがいに、はなれちゃいられなくなるよ。あんたはおれにとって、この世でたったひとりの人になるし、おれは、あんたにとってかけがえのないものになるんだよ。あんたの足音が音楽になり、なんてことなかった金色の麦ばたけも、あんたのその金色の髪を思い出してうれしくなるだろうな。

秘密のおくりものというのは、心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ、

かんじんなことは、目に見えないんだよ!

王子さまとぼくは井戸をさがしてなん時間もだまって歩いていました。日が暮れて、星が光りはじめました。

星があんなに美しいのも、目に見えない花がひとつあるからなんだよ・・・

砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ・・・

『そうだよ、家でも星でも砂漠でも、その美しいところは目に見えないのさ』ぼくは王子さまに言いました。

うれしいな、きみがぼくのキツネとおんなじことをいうんだから

王子さまがくたびれて眠りかけたので、ぼくは両腕でかかえて歩きました。

この王子さまの寝顔を見ると、ぼくは涙が出るほどうれしいんだが、それも、王子さまが、一輪の花をいつまでも忘れずにいるからなんだ。バラの花のすがたが眠っているあいだも、ランプの灯のように王子さまの心の中に光っているからなんだ・・・。

今夜で一年になる。ぼくの星は、去年、ぼくがおりてきたとこの、ちょうど真上にくる・・・きょう、うちに帰るよ・・・

『そりゃ、ありもしないことをいってるんじゃないのかい、ヘビだの、待ち合わせ場所だの、星だのっていう、その話・・・?ね、そうだろ?』

王子さまはぼくがきいたことにはこたえないでいいました。

たいせつなことはね、目に見えないんだよ・・・

花だっておんなじだよ。もし、きみが、どこかの星にある花がすきだったら、夜、空を見あげるたのしさったらないよ。

夜になったら、星をながめておくれよ。ぼくんちは、とてもちっぽけだから、どこにぼくの星があるのか、きみに見せるわけにはいかないんだ。だけど、そのほうがいいよ。きみは、ぼくの星を、星のうちのどれか一つだと思ってながめるからね。すると、きみは、どの星も、ながめるのがすきになるよ。星がみんな、きみの友だちになるわけさ・・・。

王子さまの足首のそばにきいろい光がキラッと光りました。

王子さまはちょっとのあいだ身動きもしないでいました。

声ひとつ立てませんでした。

そして・・・

一本の木が倒れでもするように、しずかに倒れました。音ひとつ、しませんでした。あたりが砂だったものですから。

これがぼくにとっては、この世の中で一ばん美しくって一ばんかなしい景色です。もし、あなたがたが、いつかアフリカの砂漠を旅行なされることがあったら、すぐ、ここだな、とわかるように、この景色をよく見ておいてください。そのとき、子どもが、あなたのそばにきて、笑って、金色の髪をしていて、なにをきいても、いっこうに、きいているようすがなかったら、一刻も早く私に手紙をかいてください。『星の王子さまがもどってきた』と・・・。

作者のサンテグジュペリがパイロットであったことは冒頭で話しましたが、実は1935年にサンテグジュペリは実際にアフリカのサハラ砂漠に不時着していたことがわかっています。この物語は実話なのかもしれません。

あなたには、『運命の人』と呼べる人はいますか?おそらくそう呼べる人には、王子さまやキツネの言う通り、ともに過ごした時間や、費やした時間があるのではないでしょうか?そしてその時間がなかったとしたら、今あなたが思い浮かべた運命の人は、はたして運命の人と呼べるのでしょうか?

私にこの本をプレゼントしてくれた人は私の『運命の人』です。一緒に過ごした時間は泣けるくらい楽しくて、本当に夢の中ような時間でした。手をつないでいったスーパー、迷ってもなかなか出られなかった(ほんとうは出たくなかった)巨大迷路、きれいだった南十字星、水の入れ方で戸惑って笑いながら作った絶品カレー、毎晩寝るのもわすれて語り合った時間、私はそれを、ずっと忘れることはないでしょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




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kee
フルマラソン3:27:43!! ファイナンシャルプランナー&JADPメンタル心理カウンセラー&上級心理カウンセラー! 普段は食品工場で仕事をしています。ランニング大好き、料理大好き、サッカー大好き、キャンプ大好き、お酒大好き、釣り大好き、激辛大好き、読書大好き、書ききれないほどの大好きに囲まれて毎日幸せを実感しています。夢はホノルルマラソンに出ること。 座右の銘『明日死ぬかのように生きよ、永遠に生きるかのように学べ』 このブログは忘れやすい私の備忘録、私の脳の第2領域です。