【メモの魔力】は『スッキリ』でもおなじみのSHOWROOM株式会社代表の前田裕二さんの著書で、累計発行部数は電子書籍を含め63万部(2020年5月)、2019年に最も売れたビジネス書です。
僕にとってメモとは、生き方そのものです。
メモによって世界を知り、アイデアが生まれる。
メモによって自分を知り、人生のコンパスを持つ。
メモによって夢を持ち、熱が生まれる。
その熱は確実に自らを動かし、人を動かし、そして人生を、世界を大きく動かします。
誰にでもできるけど、誰もまだ、その魔力に気付いていない
『本当のメモの世界』へ、ようこそ
「メモの魔力」より
メモが生き方?世界?人生?夢?
「いやいや…ありえないだろ!!そんなこと…大げさだよ」
私もこの本を読む前は、まさにそう思っていました。
しかしこの本を読み終えたときには、どうしようもなく『メモ』をとりたくなり、メモ魔式の『メモ』をとるために、必要不可欠な新しいメモ帳と4色ボールペンがどうしようもなく欲しくなり、実際に購入しました。
目次
紀伊国屋限定では前田裕二『メモの魔力』モデルのモレスキンやジェットストリームが買えるようです。
私はおそらく周りの人より、はるかに多くのメモをとる人です。必要ないかな?と思うことも基本的にはメモします。しかしこの『メモの魔力』の中で言われているメモは誰もが想起するであろう『記録のための備忘録』としてのメモではなく、『知的生産のため』としてのメモを指しています。
知的生産とは、①頭をはたらかせて②なにかあたらしいことや情報を③他の人にわかる形でアウトプットすることの3つが合わさって初めて『知的生産』と呼ぶことができます。
メモがあなたの『人生のコンパス』を作る
いつでもどこでも、寝ても覚めても、笑っても泣いても、いつも一緒にいる『自分』について、あなたはどのくらい知っていますか?就職活動や面談などで必要に迫られて整理した『自分』ではなく、深堀を重ねて自分自身を深く知り、自分のものさしを手に入れることが大切です。
『自分』のことがわかっていると、明確な価値観や死生観に沿って、正しい方向に向かって進むことができます。人生の密度を高めて『生きる』という航海を正しく進めるための指針、『人生のコンパス(軸)』を手に入れることができるので、ブレずに生きていくことができます。『自分』を客観視して、自分を理解する。そして『人生のコンパス』を手に入れる。メモは、僕たちの可能性を広げ、人生をより良いものにしていくための、この上なく心強い味方なのです。
『記録』ではなく『知的生産』のためにメモをとる
前述しましたが、備忘録としての単なるファクトの記録ではなく、人間にしかできないことに集中するためにメモを活用します。単純に起きたことや見聞きしたことだけを書き写すだけではなく、そのファクトから新しいアイデアや付加価値を自ら生み出すことを強く意識して、『第2の脳』としてメモをとることで、残酷なまでに時間が限られている人生という旅の中で、『より本質的なことに少しでも多くの時間を割くこと』が出来るようになります。
メモによって鍛えられる5つのスキル
- アイデアを生み出せるようになる(知的生産性の向上)
- 情報を『素通り』しなくなる(情報獲得の伝導率の向上
- 相手の『より深い話』を聞き出せる(傾聴能力の向上)
- 話の骨組みがわかるようになる(構造化能力の向上)
- 曖昧な感覚や概念を言葉にできるようになる(言語化能力の向上)
アイデアを生み出すメモの書き方
ここからは具体的なメモの書き方が紹介されていますが、その前に著者が強調しているのは、『メモは姿勢である』ということ。何らかの目的をもって、日々、あらゆる情報に対して、毛穴むき出し状態でいられるかどうか。身の周りのあらゆる情報にアンテナを張り、そこから何らかの知的生産を行う意識を持てているかどうか。というのが、フォーマット以上に身につけてほしい要素だそうです。
『ファクト→抽象化→転用』という最強のフレームワークが知的生産メモにおける最大のポイントになる。
「ファクト」をもとに「抽象化」し、それを自分のアクションに「転用」できるようにする。
①ノートは見開きで使います。
②琴線に触れた出来事をファクトとして書き出します。
③ファクトを抽象化して書き出します。
④抽象化の内容を何かに転用できないかを書き出します。
具体的な事例で説明しましょう。取引先との打ち合わせで、「フリーペーパーを配布する際、おまけにアメをつけた」という、とあるプロモーションの話を聞きました。
「大阪のおばちゃんは、なんでもないときにも、よくアメちゃんをくれる」という話がありますが、大阪でこの「チラシと一緒にアメちゃんを配る」という施策を実施したところ、ものすごい勢いでフリーペーパーがはけたそうです。ところが、同じやり方を東京で試したところ、東京では大阪の3分の1の効果しか得られなかったそうです。ここを素通りしない感覚がとても重要だと著者は言います。このファクトを抽象化して、「大阪人は東京人よりも直接的なメリットの訴求に弱い」という一つの命題を得ることができました。
次に、「転用」です。著者は、「僕が運営しているSHOWROOM(インターネット上の仮想ライブ空間)にも、大阪人のそんな気質が反映されているのでは?」といった仮説を立てました。そして右ページの右側に「SHOWROOMでも同じことが言えないか、地域別の利用動向データを調べてみる」と書き込みました。
SHOWROOMでは、パフォーマンスへの賞賛を表すために、ユーザーがギフトを投げ込むことができるシステムがあります。ギフトの中には有料のものもあり、地域別にユーザーのお金の使い方を検証してはどうかと考え、実際にデータを分析してみると、大阪のユーザーの課金単価が、東京よりも少し低いことがわかりました。
この仮説をベースに、さらに思考を発展させます。「大阪人がお金を使わない」というわけではなく、大阪人にとって価値を感じるものと感じないものが明確に分かれているだけではないのかと考えます。実際、「面白いものにお金を出すのは厭わない」という側面もあるのが大阪人。吉本新喜劇は今も盛況だし、人気芸人のステージはなかなかチケットが手に入りません。
その情報をもとに著者は、大阪人も納得するようなハイクオリティのコンテンツを用意し、それに対して前払い式で対価を支払うようなビジネススキームを思いつきました。さらには、チケットが入手困難な芸人のネタをプレミアムコンテンツとしてSHOWROOMで配信するというアイデアも浮かんだそうです。「大阪でアメちゃん付きチラシをたくさん配った話」から、2つの新たなビジネスモデルアイデアが生まれました。
「抽象化」は人間に与えられた最強の武器
『抽象化』こそが著者のメモ術の根幹です。空からポツポツ落ちてくる水の粒をまとめて『雨』と呼ぶ。これも抽象化の一種です。抽象化のコツをつかむ上では、一番重要なことは問いです。目の前の現象や考え方を抽象化して、また別の名前をつけて呼びなおす『What型』、目の前の現象にはどんな特徴があるかということを深堀して考える『How型』そして、ヒット映画が当たった理由を抽出して、また別の企画に転用したい。物事の本質を知る『Why型』があります。知的創造においては、HowとWhy、特に『Why型』が大きな価値を生み出すことが多いです。抽象化は慣れないうちは時間のかかる作業ですが、一生懸命考えて抽象化訓練を続けると、かなり短い時間でできるようになります。情報やコンテンツに触れる際にメモをとり、抽象化する癖をつけると、『1』を聞いて『10』もしくは、それ以上を知ることができるようになります。抽象化を通じてインプットした法則は、あとからいくらでも他の具体に転用して味わえる『価値のある原液』になります。カルピスの原液に水ではなく、ソーダを掛け合わせると別の飲み物になるように、自分の意識次第でいくらでも原液を採掘できるこの情報の時代に、あらゆる原液を前にして通り過ぎてしまうことはとても機会損失が大きなことだと思います。
メモで自分を知る
自分とは何か?自分が本当に望んでいるものは何か?これからのAI時代においては、機械に代替できないような人間らしい生き方をしている人、そして、人の中にある『感情』そのものに価値が集まるようになります。つまり、「自分は何をやりたいのか」の問いに明確に答えられる人間であるかどうかが、今後、ますます大事になっていきます。『自分を知る』ということが何よりも重要です。こんな情報が溢れて混沌としている時代において、迷っていない人が最強です。お金のあるなしに関係なく、やりたいことが明確な人『アジェンダ』を持っている人が一番幸せだと思っています。
「人生の軸」を見つける
『人生の軸』とは、自分の価値観、そして自分が人生の中で大切にしているものの優先順位です。
例えばあなたは「好きな色はなんですか?」と聞かれたとき、パッと答えられるでしょうか?そしてその理由についてちゃんと答えられますか?
徹底的に自己分析をすると、次第に自分が持っている『人生の軸』が明確になってきます。「自分はこういうときに幸せを感じやすいから、こんなゴールを持ったら、すごく楽しくなりそうだ」などと、目指すべき方向性を自ら設定できるようになるのです。自分自身のことを深く知ると、不思議と、自然に自信を持てるようになります。もちろん、至らぬ自分に気づくこともあるでしょう。しかし、「至らぬ」ということがわかっているからこそ、そこからの成長があるのです。
The Magic of Memos
メモとは、生きること。あなたのメモを、そして、メモで変わったあなたの人生を眼前にするその歓喜の瞬間を、心から待ちわびてやみません。メモの魔力が僕らを引き合わせてくれる、その日まで。
Yuji Maeda
本の最後には【自分を知るための自己分析】1000問が収録されています。ぜひやってみてください。自分を知り、人生の軸を見つけて、迷わず濃い人生を一緒に生きていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。